Rd.6 in 長野レポート
いよいよ2006年最終ラウンド
2006年10月22日(日)長野県菅平高原および野沢温泉村周辺を舞台に「TRDヴィッツチャレンジRd.6in長野」が開催された。 ラリーの中心となる2つの地域には大きなスキー場があり、あとひと月もすれば雪が降るという場所なだけに、朝はかなり肌寒い気温であったが、好天にめぐまれ、暖かく過ごしやすいコンディションとなった。
スタート会場では、シリーズを追っている選手数名が諸般の事情で参加できなかったにも関わらず、56台ものヴィッツチャレンジ車両が集い、相変わらずの盛況ぶりを見せた。さらに、最終戦にもかかわらず7台もの新規参加車両が加わり、その中には「来年の参加を見据えて出場しました」という選手もおり、国内モータースポーツ界においてヴィッツチャレンジへの注目がますます上がっている事を伺い知ることができた。
そのような状況の中、オープンクラスでは前回のRd.5in中部でシリーズチャンプは斉藤邦夫選手に決まっているものの、シリーズ2位の座をランキング上位5台が争うという大激戦の様相を呈しており注目を集める。また、チャレンジクラスのシリーズ争いも多くの選手がシリーズ入賞のチャンスを有しており、オープンクラスへのステップアップを目指して各選手、ラストスパートにかけている様子であった。
主催 | チームプロクルーズ(T−PROCREWS) トヨタモータースポーツクラブ(TMSC) |
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開催日 | 2006年10月22日(日) |
開催エリア | 長野県内 |
スタート会場 | エムウェーブ(M−WAVE) |
サービスパーク | モーターランド野沢 |
ゴール会場 | 野沢温泉アリーナ |
セクション数 | 1 |
SS本数 | 6本 |
SSトータル距離 | 約10.5km |
総走行距離 | 約180km |
参加台数 | 56台(オープンクラス21台/チャレンジクラス35台) |
完走台数 | 49台(不出走0台) |
プレイドライブ | 株式会社芸文社 | 12月1日発売号 | モータースポーツ誌 |
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MJマガジン | (株)日本文化社 | 11月25日発売号 | 自動車雑誌 |
ザッカー | 三栄書房 | 11月20日発売号 | 自動車雑誌 |
JAFスポーツ | (株)JAF出版社 | 1月2月合併号 | JAFモータースポーツ広報誌 |
いよいよ最終戦スタート
スタートは長野エムウェーブ。ここは1998年に開催された長野冬季オリンピックのスケート競技会場で有名な場所である。 ヴィッツチャレンジ開催の広報活動の成果もあり、当日はたくさんの近隣の方々も集まる中、とても和やかな雰囲気で全選手がスタートをきった。
今回のラリーステージオーダー
午前中に行われたSS1とSS3は『大谷不動線』を使用した舗装林道ステージ。 「唐松の落葉で路面が滑りやすいが、ぜひ挑戦してもらいたいので、前日は全員でホウキの穂がなくなるまで落ち葉を掃き、予定通り長距離の林道SSを用意した。」というオフィシャルの努力により、アスファルトがしっかり見える状態を保っている。 しかし雪のように降り積もる落ち葉に、状況は刻一刻と変化する。
SS2は、長野ラウンドの定番『峰の原スキー場駐車場』のダートステージ。パイロンターンを繰り返すテクニカルなセクションからスピードを上げてスキー場の整備路に飛び込んでいく選手の肝を試すステージである。
SS4とSS6は、ダートトライアルコース『モーターランド野沢』を全面に使ったロンググラベルステージ。 その距離はまるでグラベル林道SSを走っているかのようなチャレンジングなステージとなった。
SS5は『野沢温泉スキー場』の駐車場を利用したジムカーナ風ステージ。 一日のうちに様々なタイプのステージを攻略していくヴィッツチャレンジは、まさにラリーの名にふさわしい競技といえるだろう。
SS1
本日1本目は舗装林道SS。 オープンクラスでは、ベテランの鷲尾/豊田組が痛恨のコースオフ。車のダメージは大きくないもののここでリタイヤとなった。 この影響で競技は一時中断、数台のエントラントのタイムが計測されなかったため、オープンクラスはSS1キャンセルとなった。
チャレンジクラスでは、今年高山ラウンドの林道SSで驚異的な速さを見せた勅使河原/宮下組が1番時計。 前回中部ラウンドの林道SSで惜しくもマシントラブルでリタイアしたみつなり/蟹江組が雪辱を晴らす走りで2番時計。 今年急成長を見せる女性コンビで、クラスシリーズランキング3位につけている毛受/保見組が3番時計で入った。
SS2
峰の原スキー場グラベルSS。 オープンクラスでは、チャレンジクラスからのステップアップ組松岡/清水組がベストタイム。 師匠であり既に今シーズンのオープンクラスチャンプを確定させている斉藤邦夫選手に継ぐシリーズ2位の座を虎視眈々と狙う。 2番手にはその斉藤/伏谷組が入った。
チャレンジクラスでは、総合でもトップ10に入るタイムでみつなり/蟹江組がクラスベスト。 2番手には、ヴィッツチャレンジのスカラシップにより全日本ラリーを戦った経歴を持つ坂本岳選手とコンビを組む本間選手が入る。3番手には、徐々に結果を出してきている吉村/小泉組が僅差で続いた。
トランスポート
菅平高原に設定されていたSSエリアから、野沢温泉村のSSエリアまでは約70kmという長い区間を走らなければならないが、好転にも恵まれ高速道路〜一般道の移動も紅葉見物も兼ねてのリエゾンとなった。
SS3
本日のハイライト、3.7kmの林道SS。 オープンクラスでは野村/森脇組、加藤/柳沢組がなんと同タイムでベストタイムを分け合う。以下、斉藤、松岡、鎌野、岩波とシリーズ2位を狙う選手が僅差で続き、今年の戦いがいかに熾烈を極めているかが伺えるSSであった。
チャレンジクラスでは、またしても勅使河原/宮下組がクラスベスト。事故で足に障害を負うというハンデキャップをものともせずにラリーに挑戦し続ける勅使河原選手、「シフトダウンが少ない林道はとても走りやすいんです」とのことだがアクセルをほとんど緩めず目一杯のコーナーリングで果敢に林道に挑戦する走りは実にすばらしい。 続く女性コンビ毛受/保見組も果敢に挑み、3番手みつなり組を1秒以上離して2番手タイム。 どうやらこの3台が今日の表彰台を独占しそうな展開となってきた。
SS4
チャレンジクラスの選手がサービスでのつかの間の休息を過ごす中、オープンクラスの選手たちが続々とSSをスタートしていく。
オープンクラスベストは、斉藤/伏谷組が2番タイム岩波/松本組を1.4秒突き放す好タイムで獲得。今回も良い走りをしている岩波に続いて野村、松岡と続き優勝争いは混戦を極めてきた。
チャレンジクラスではなんとトップ争いを展開していた毛受/保見組がスタート前にマシントラブルにより痛恨のリタイア。シリーズ3位を十分に狙えただけに悔しいリタイアとなってしまった。 そんな中、総合トップ10入りする好タイムを出した鈴木/黒川組がクラスベスト。2番時計には僅差でダートで強さを見せている鈴木/本間組が入りクラス上位に進出してきた。
SS5
温泉街の一角にある駐車場を使用したジムカーナ風SS。
オープンクラスでは松岡と同じくステップアップ組であり、シリーズ上位争いを展開している鎌野/楯岩組が威勢よくトップタイムを獲得。
チャレンジクラスでは、みつなり/蟹江組がオープンクラスの鎌野と並ぶタイムを出し、総合ベストタイムを分け合った。
SS6
今年1年の締めくくりの最終SSは再びモーターランド野沢のロンググラベルSS。ギャラリー、サービス、関係者が見守る中、SS2で好タイムを出し、本日好調な走りで総合1位を走る松岡/清水組を「だれが勝つのかまったくわからなかった」という野村/森脇組、岩波/松本組が僅差で追うという争いに注目が集まった。 やはり速かったのは斉藤/伏谷組でベストタイム。 そこに勝負どころの岩波/松本組が斉藤に並ぶ会心のベストタイムで今季初優勝かと思われたが、なんとパイロンタッチという厳しい裁定。 これで優勝争いに残ったのはあと2台だが、「あと一歩だった」という松岡/清水組が若干のタイムロスで野村/森脇組に逆転を許してしまった。 野村はこれで今季2勝を上げ大混戦となったシリーズ2位の座を見事に獲得した。
チャレンジクラスでは、吉村/小泉組がうれしいクラスベストタイム。表彰台まであっと一歩のクラス4位となった。 セカンドベストにはみつなり/蟹江組が入り、ライバルの脱落もあったが今回は危なげなく優勝を決めることができた。
今年も様々なドラマが生まれたヴィッツチャレンジ、ゴール会場に帰ってくる選手たちの顔は、一年間走りきったという充実感にあふれていた。
表彰式
オープンクラス
優勝は野村/森脇組で、大混戦となったシリーズ2位の座を見事獲得した。 わずかコンマ2秒という差で初優勝&シリーズ2位を逃したのは、なんと昨年チャレンジクラスからステップアップした松岡/清水組。 ステップアップした選手がここまでやれるという実績はチャレンジクラスの選手にとって大きな励みになったことであろう。 3位はシリーズチャンプを獲得した斉藤/伏谷組。 今年のシリーズを引っ張った全日本ジムカーナチャンプはラリーというカテゴリーを存分に満喫したようだ。
「今シーズンは本当に勝負を楽しめたシーズンでした。来年はまだどうなるかわからないが機会があればぜひ参加したい。(野村)」
「自分がここまで勝負できるようになれたなんて信じられません。がんばった甲斐があった。朝からコドライバーが胃が痛いとうるさかったが供にシーズンを乗り切ることができました。(松岡)」「すべてをヴィッツチャレンジに捧げました!(清水)」
「この1年は本当に楽しかった。どのような形になるかわからないがラリーをぜひ続けたい。(斎藤)」
チャレンジクラス
今期4勝目を飾ったみつなり/蟹江組は見事チャレンジクラスシリーズ優勝を獲得。 すがすがしい笑顔でヒーローインタビューを語った勅使河原/宮下組が2位表彰台、シリーズ3位の座を見事に獲得し、関係者に精一杯の感謝の意を表した。 3位は鈴木/黒川組。前回2位、今回3位とコンスタントに上位争いをできるようになっており、成長見せたシーズンとなった。
「今年一年よい経験ができました!(みつなり)」「土の上を走るカテゴリーは初めてだったが、その難しさを実感することができ、よい経験になりました。また挑戦したい。(蟹江)」
「今年は序盤でマシントラブルでリタイアするなど困難はありましたが、ヴィッツチャレンジ主催者の皆様、NATS(日本自動車大学校)の強力なバックアップのおかげで走りきることができました。本当にありがとうございます。(勅使河原)」
「ヴィッツチャレンジに挑戦し続けてきてやっと勝負ができるようになれてうれしいです。(鈴木)」
2005年に2クラスとなり、選手達がそれぞれの目的や課題を持って挑むことが出来るようになった。昨年のチャレンジクラスからのステップアップ組みがオープンクラスに挑み、それに負けじと今年のチャレンジクラスの選手達が後を追う。そんな状況が功を奏し、2006年はそのシステムがより熟成され、選手を育てるシリーズとして確立されたといえよう。
だれもが同じコストで挑むことができ、均等にチャンスが訪れるヴィッツチャレンジ。しかし、平等ゆえに、各々のドライビングテクニック、ナビゲーションテクニック、メンテナンス管理能力が問われる難しい一面も併せ持つ。すべての選手が真剣に挑戦できるからこそ、選手同士の中にもお互いに協力しあう心が生まれ、笑顔の耐えない競技の現場が生まれたのだろう。
来年は新型ヴィッツRSクラスが設定されることがアナウンスがされ、選手およびショップなどの関係者の関心を誘っていた。 さらに、(前日に行われた)全日本ラリー選手権において高橋一志選手がドライブする新型ヴィッツRSがクラス5位に入賞したとの報告も行われた。 「新型で憧れの全日本ラリーで勝負できるかもしれない」という期待に若手選手たちは興味津々の様子であった。
2006年度の「TRDヴィッツチャレンジ」を締めくくるサンクスパーティが、12月3日(日)に『大手町サンケイプラザ』にて開催される。 昨年も参加者・関係者・スポンサー関連の方々100名以上を迎えて盛大に開催された。 もちろんシリーズ表彰式もこの中で執り行われる。