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新緑の飛騨路。 新型ヴィッツRSが好観の林道を駆け上がる!!

2007年6月3日、国内屈指の名峰である槍ヶ岳、奥穂高岳を有する北アルプスの玄関口、高山を舞台にTRDヴィッツチャレンジRd.3in高山が開催された。 高山ラウンドの特徴はなんと言っても本格的な林道ロングSS、全日本ラリー選手権の舞台にもなる憧れの地でヴィッツチャレンジャー達が競演する。

天気予報では雨との情報もあったが、心地よい日差しと過ごしやすい陽気の中、50台の新旧ヴィッツが集結した。 今シーズンクラス2のシリーズトップであった鎌野/竹平組が新型ヴィッツにスイッチするなど、クラス1は今回13台のエントリーと着実に台数を増やしている。

スタート会場となった『ほうのき平スキー場』には観光バスの発着場もあり、バスを待つ観光客もすぐ横に設置されたスペシャルステージを見て興味津々の様子で伺っていた。また、近隣で開催されていたロードレースやツーリングのライダー達や、地元の方々までもがヴィッツチャレンジ開催を知り、観戦のために足を運んでくださった。色とりどりのヴィッツラリー車は、飛騨高山の随所で目を引く存在となっていたようだ。

早朝のレキを終えた選手達は、スタート会場内で今シーズン初となる林道SSの話題でもちきり。 ペースノートの作り方を選手同士で相談し合ったり、林道ステージに慣れている選手が若手選手にシフトチェンジやブレーキングのタイミングなどのアドバイスをしたりしていた。 若手選手たちにとってはベテラン選手のアドバイスがありがたく、ベテラン選手にとっては「ラリードライビングを教えることが楽しい。」とのことで、各々和気あいあいとした雰囲気で本日のラリーへ向けて準備を進めていく。 通常であれば、ペースノートはクルーにとって極秘なものであるが、ヴィッツチャレンジでは逆にお互いのノートを見せ合ってノウハウの交換を積極的に行っている。

せっかくなので選手たちのペースノートを少し覗いてみよう。
発音の仕方だけ見ても、左と右を「レフト、ライト」と読むのか「エル、アール」と読むのか「ひだり、みぎ」と読むのかなどそれぞれに個性がある。「エル、アールが一番発音時間が短いので一番速い」という説もあるが実際のところはわからない。ドライバーがイメージしやすい呼び方はどれかを採用すると良いのだろう。

コーナー角の段階表示もWRCのようにハンドルの切れ角などで「7段階」または「8段階」にする方法やアナログ時計をコーナーの角度に置き換える方法もある。前者はドライバー独自の方法論があるので紹介が難しいが後者の「アナログ時計方式」は日本でも古くから使われている方法なので紹介しよう。

これは時間針でコーナーの角度を理解する方法で、たとえば「3R」というと、3時ということになるのだが、3時を示す時計を思い浮かべてもらうと…、そう、ちょうど90度の角度になるのである。これを基準にして「2」はかなり鋭角なコーナー、「1」はパイロンターン(180度)、「5」はちょっと緩めのコーナーで「6」は殆どまっすぐというイメージがわいてくる。これに「2.5R」などコンマ5を加えてイメージを膨らます選手もいる。さらにヘアピンカーブは「みぎヘアピン」などダイレクトにノートに書いている選手もいた。

また、ヴィッツチャレンジで用意されるロードブックは本場WRCのものと同じぐらい非常にしっかりと作成されており、各ページ裏面の空白にペースノートを書き込む選手もいたり、さらにどのページにどのSSの情報があるかなどがわかりやすいように文房具屋で売っている「付箋」を使っていつでも瞬時に必要なページが見れるようにする工夫をしている選手もいた。「スタート前やレキの時は落ち着いているが、ひとたびラリーがスタートするといろんな要素で慌ててしまったりするので、こういうふうにしておけば安心だし、ドライバーに変な気を遣わさせずにドライビングに集中してもらえる。」とは現在シリーズ3位(今大会後2位)の赤木弥生選手の弁。どのような状況下でも、いかに分かり易くペースノートやロードブックを用意できるかが林道で勝つ秘訣となるようだ。

ヴィッツチャレンジでは、こういった方法論を何人もの選手たちが共有して実践している。「良い方法はお互い教え合う」というヴィッツチャレンジ精神が現れているようで、それこそが和やかな雰囲気をかもしだす一番の要因のようだ。


イベントデータ
主催 松本カースポーツクラブ(MCSC)
開催日 2007年6月3日(日)
開催エリア 岐阜県内
スタート会場 ほうのき平スキー場
サービスパーク ほうのき平スキー場
ゴール会場 シャレー中西
セクション数
SS本数 6本
SSトータル距離 約15.5km
総走行距離 約123km
参加台数 50台(クラス1:13台/
クラス2:15台/クラス3:22台)
完走台数 49台(不出走0台)
当日の取材媒体
ザッカー 株式会社三栄書房 6月20日発売号 自動車雑誌

ステージ概要

SS1/SS3/SS4

『ほうのき平スキー場』駐車場を使用した特設ステージ。 駐車場の入り口から400mほどの上り坂(舗装)を一気に駆け上り、グラベルの駐車場にダイナミックに飛び込んでいき、パイロンで構成されたテクニカルなセクションをこなして行く設定。

SS2/SS5/SS6

オール舗装林道のSS。SS2はSS5・6の途中からのステージで3km弱。 SS5・6はフルステージの5.6kmと非常にロングコースな設定。 存分に林道アタックを満喫できそうだ。

いよいよスタート!

たくさんのギャラリーが見守る中、ヴィッツラリー車は1分間隔で『ほうのき台スキー場』駐車場に設置されたスタートゲートをくぐり、元気に本日のラリーをスタート。 スタート後は『ほうのき台スキー場』の別の入り口からSS1へのTCへと向かう。 スタートゲートのすぐ横にSS1があるため、会場に集まったギャラリーも興味津々な様子で声援を贈っていた。

SS1

スタート直後が右ヘアピンとなっており、スタートと直後のヘアピンの組み合わせをいかにうまく処理するかが、その後の急坂のスピードのノリ具合を左右するようだ。 スピードのノった状態でグラベルのパイロンセクションにアクセル全開で飛び込んでいくヴィッツの様は非常に迫力がある。

クラス1

本日1本目、林道へのウォームアップとも言えるSS1。 パイロンの処理がズバ抜けて巧みなシリーズリーダー斉藤/伏谷組がメリハリのある操作でまずはベスト。 そのペースに付いてきた野村/森脇組がセカンドベスト。 大迫力のスピードでグラベルセクションへ飛び込んでいった岩波/山岸組が僅差で3番時計となった。

クラス2

クラス1の斉藤選手と同じくジムカーナ出身の佐々木/高尾組がパイロンセクションをうまくこなしてクラスベスト。 コンマ差で夫婦で参加の赤木/赤木組、前回クラス優勝の松岡/武田組が続いた。

クラス3

クラス2と合わせても2番目となるスペシャルタイムで鈴木/本間組がクラスベスト。 さらにコンマ差で畠山/坂井組がすばらしい走りを見せた。

SS2

いよいよ今シーズン初の林道SS!全日本でも使われるまさに本格ラリーコースといえるこのステージで日ごろの成果を出すべくヴィッツたちがスタートして行く。

クラス1
 

「ブレーキングもライン取りもギリギリまで攻めた。ヴィッツチャレンジではじめて怖いと感じた。」という斉藤/伏谷組が鬼神の走りでクラスベスト。 そのペースに唯一ついて行った野村/森脇組が得意の林道で2番時計。

クラス2

「ヴィッツチャレンジ出身で全日本ドライバーを経験した坂本選手に鍛えてもらった。」という中村/今井組が練習の成果を発揮してクラスベスト。 「出せるだろうと計算したタイムを中村選手に持って行かれた。(コドラ)」と松岡/武田組が2番時計をマーク。 3番手にはドライバー、コ・ドライバー共に女性クルーである毛受/保見組が僅差で続き、林道でのスピードを示した。

クラス3

クラス3で唯一、4分の壁を突破した畠山/坂井組がクラスベスト。 経験豊富な岩城/高橋組が好タイムで2番時計となった。

サービスパーク

空には若干の雨雲が現れはじめているが、ところどころには晴れ間が覗いており、過しやすい陽気となったサービスパーク。 澄んだ空気の中で、各選手は用意されたお弁当を頬張りながら、サービス隊が用意したテントやSS4が見渡せる土手など、思い思いの場所で和気藹々とラリー談義に花を咲かせていた。
今回はサービスポイントからSSを見ることができるので、SS4の攻略に余念がない様子。 午前中にたくさんの選手の走りを観戦していたサービス隊からもアドバイスを受けることができた選手もいたようだ。 また、いつも応援している選手の走りを思う存分観戦できたサービス隊の表情は明るく、ドライバー、コ・ドライバー、サービス隊の絆はさらに深まったようだ。

SS3

基本的にはSS1のリピートだが、グラベルセクションでは一部パイロンの組み合わせが変更されており、ミスコースをしないようにコ・ドライバーとのコンビネーションを高めていくことが好タイムへの道となるようだ。

クラス1

ここでも速かったのはやはり斉藤/伏谷組で、2番手野村/森脇組を2秒突き放す快走を見せた。 斉藤選手の走りはパイロンに対するアプローチのバリエーションが豊富で、使い分けがしっかりしている印象だ。 さらにクラス2からステップアップを果たし「まだ一回しか乗っていないんです。」という鎌野/竹平組がすばらしい走りを見せ3番時計となった。

クラス2

クラス1の斉藤選手のアドバイスを受けている松岡/武田組が斉藤選手同様のメリハリのついたパイロン処理を見せ、クラスベスト。 午前のセクションをトップで折り返した。 グラベルを得意とする赤木/赤木組がすばらしい走りを見せ2番手タイム。

クラス3

重量級と言われる鳥海/佐藤組が急坂セクションを勢い良く駆け上り、パイロンセクションですばらしい走りを見せクラスベスト。 その鳥海組に林道ですばらしい走りを見せた畠山/坂井組同タイムで食いつき同タイムベスト、クラストップで折り返した。

SS4

基本的にはSS1・SS3のリピートだが、SS3同様にコース設定に変更が加えられており、コ・ドライバーの正確な指示に従ってターンへのアプローチを決めた選手が良いタイムを出したようだ。また、午前中の走りを見たサービス隊からのアドバイスで「所々のグリップの違い」を書き込み、午前中よりさらに精度の高めたペースノートを作る選手も見うけられた。

クラス1

  本当に速い、斉藤/伏谷組がまたもすばらしい走りを見せてベストタイム。 何とか挽回したい野村/森脇組も斉藤選手に遜色のない走であったがわずかに及ばなかった。 3番手には粘り強い走りを続けているシリーズ2位の増川/成瀬組が食い込んだ。

クラス2

松岡/武田組がSS3に続き再びベストタイム。2番手にはSS2の林道で4番手タイムを叩き出した吉村/小泉組がパイロンセクションでもすばらしい走りを見せ2番手タイム。クラストップ3の争いに絡んできた。 同じくトップ3争いを演じていた毛受/保見組が痛恨のパイロンタッチで惜しくも6位に後退してしまった。

クラス3

今日はノリにノッている畠山/坂井組がいよいよパイロンセクションでもクラスベスト。 その畠山組にコンマ1秒差で続いたのが久保田/加藤組でうれしいセカンドベストとなった。

SS5

いよいよフルコース林道SS。 若干雲行きが怪しくなり降雨の気配も漂う。各選手はSS2で得た情報や教訓をペースノートに書き止めて林道ステージに挑んだ。

クラス1

  今回も本当に強い、斉藤/伏谷組が再びフルアタックを敢行してクラスベスト。「斉藤選手のペースについていきたかった。」野村/森脇組が後一歩及ばず2番時計。 ラリーストらしい経験の走りでクラス3番手には岩波/山岸組が食い込んだ。

クラス2

「中村選手が追い付いてくるような気がした。」と長い林道コースならではの印象を語った松岡/武田組がクラスベスト。 2番手にはその中村/今井組が食い込む。 「SS2ではタイムが出ず悔しい思いをした林道で、今度は納得した走りができた。」という赤木/赤木組がすばらしい走りで3番手タイムでトップ3争いに食い込んできた。

クラス3

クラス2と合わせても4番手タイム、後続の岩城/高橋組を6秒以上離すスペシャルタイムを畠山/坂井組がたたき出し表彰台の頂上をほぼ手中に納めることに成功した。 3番手には目黒/目黒組が入る。

SS6

ステージ自体はSS5と全く同じだが、最終ステージ直前にとうとう雨が降り出し、大粒の雨で路面には水たまりができてしまう難しいコンディションとなった。

クラス1

  「最後まで攻めた。」という斉藤/伏谷組が、ドライ時からのタイムダウンを4秒に抑えるまさにフラットアウトな走りで悪コンディションを乗り切り、今大会全てのSSでベストタイムを獲得すると言う快挙を達成した。 唯一斉藤組のペースに食らい着いく野村/森脇組もタイムダウンを最小限に抑える全開走行を敢行、見事2番手タイム2位表彰台を獲得した。 3番手には今回からステップアップした鎌野/竹平組が再び入り、林道ステージでも戦えることをアピールした。

クラス2

難しいコンディションをトップタイムで切り抜けたのは佐々木/高尾組で赤木/赤木組とのポディウム争いを制し見事3位表彰台。 ステージ中、「中村選手がすぐ後ろにいるぞ。」とコ・ドラに言われ想像以上に悪いコンディションだったというステージを臆すること無く全開で切り抜けて松岡/武田組がクラス優勝を決める。 「すぐ目の前に松岡選手がいるぞ。」とコ・ドライバーに言われ続けた中村/今井組がタイムは僅かに上回るものの、あと一歩届かず2位表彰台。 ロング林道ステージはまさにコ・ドライバー同士の戦いだったようだ。

クラス3

「ラリー中に眼鏡が壊れてしまったが、無かったのが逆によかったのかも。」とジョークを飛ばし悪化していく状況をものともせずにSS5に続きまたもやクラス2と比べても4位というタイムをたたき出した畠山/坂井組が、全開で表彰台の頂上に上り詰めた。 2番手には山田/渡辺組が入り、力強い走りを披露した。 3番手は岩城/高橋組で「僕も近くがよく見える眼鏡が必要かな。」と畠山選手に次ぐ2番表彰台を獲得。 「もっと上に行かせたかった。(コ・ドラ)」という鈴木/本間組が最後まで林道を安定したペースで走り切り3位表彰台。 ここでもコドライバー同士の戦いが展開されていたようだ。

表彰式

表彰式は毎年全日本ラリーハイランドマスターのゴール会場でも使用されているシャレー中西で行なわれた。 ホテルと主催クラブの好意により大浴場も利用することができ、選手やサービス隊には好評だったようだ。 また、表彰前に「今日、一番元気にラリーをしていた賞」を主催クラブが用意。普段から元気にオフィシャルや観客に声をかけている、まさにヴィッツチャレンジを盛り上げている選手達が表彰され、会場からは盛大な拍手が送られていた。 「ラリーはみんなで作るもの」という主催者のラリーシップとヴィッツチャレンジが見事に融合した一幕であった。

クラス1
優勝 斉藤 邦夫/伏谷 裕士
2位 野村 長/森脇 克也
3位 岩波 敏樹/山岸 佑也

「最後まで攻めた。新型RSに切り替えて初の林道SS、当シリーズで走っていてはじめて怖いと感じた。」(1位Dr.斎藤選手)
「斉藤選手のペースについて行きたかったが適わなかった。練習をし直して再び挑みたい。」(2位Dr.野村選手)

クラス2
優勝 松岡 淳/武田 宏一
2位 中村 平祐/今井 敦
3位 佐々木 康行/高尾 龍也
4位 赤木 攻/赤木 弥生

「中村選手がすぐ後ろにいるぞ。と林道走行中ずっと言い続けたのが良かった。」(1位Co-Dr.武田)「次戦は仕事の都合で出走出来ないため今回勝てて本当にうれしい。」(1位Dr.松岡)
「すぐ目の前に松岡選手がいるぞ。と捲し立てました、あと一歩!」(2位Co-Dr.今井) 「ヴィッチャレ出身のラーリーストである坂本岳選手に鍛えてもらいました。ヴィッツチャレンジは一つ聞けば5つ教えてくれるベテランラリーストが沢山います。若手の人たちもどんどん聞いて成長してほしい。」(2位Dr.中村)

クラス3
優勝 畠山 貴之/坂井 浩二
2位 岩城 のぼる/高橋 功
3位 鈴木 隆司/本間 龍史

「ラリー中に眼鏡が壊れてしまったが、無かったのが逆によかったのかも。」(1位Dr.畠山)
「僕も近くが良く見える眼鏡がそろそろ必要かな。」(2位Dr.岩城)
「もっと上に行かせたかったという思いが強いです。」(3位Co-Dr.本間)

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